◆本MOU締結背景と役割
Green Carbonは、東南アジアを中心に自然由来のカーボンクレジット創出に取り組んでおり、森林保全、水田、マングローブ植林、牛のゲップ削減、バイオ炭プロジェクトなど自然由来のカーボンクレジット創出を幅広く展開しています。各地域の自然資源の特性に適したカーボンクレジット創出プロジェクトの開発を行うとともに、衛星データを活用した適地選定とモニタリングにより、効率的かつ透明性の高いプロジェクト運営を実現しています。
SEARCAは、東南アジア地域の政府間組織であるSEAMEOによって1966年に設立された非営利団体です。農業分野の大学院教育提供をはじめ、東南アジア各国の大学及び研究機関と提携し、同地域の農業課題に取り組んでいます。
この度、SEARCAとの協力のもと、東南アジア地域における農業由来のカーボンクレジット創出を促進すると同時に、更なる脱炭素と農家の裨益拡大に貢献することを目指し、MOUの締結に至りました。
本協力において、SEARCAは農業分野における専門的な知見と広範なネットワークを活用し、プロジェクトの設計と開発を支援します。Green Carbonは、国際基準に準拠したカーボンクレジット創出のための知見共有、必要データの収集・分析体制の構築、そして創出されたカーボンクレジットの認証取得・販売までの一連のプロセスを主導します。カーボンクレジットのスキームをインセンティブとして、持続可能な農業体制への移行を推進します。
◆今後の展開
本協力に基づき、Green Carbonは東南アジア地域におけるカ―ボンファーミング(農地土壌への炭素貯留を促進する農業手法)の実践に注力してまいります。東南アジア地域の2021年の農業生産からのGHG排出量は0.82Gtであり、これは世界全体の農業関連排出量の約9%を占めています※3。農業部門は東南アジアの重要な排出源であると同時に、持続可能な農法への転換によって大きな排出削減ポテンシャルを秘めています。
Green Carbonはベトナム、フィリピンを含む東南アジア諸国において、稲作由来のカーボンクレジット創出プロジェクトを大規模に展開しています。今回のSEARCAとの協力により、その取り組みを稲作以外の農業分野へと拡大します。具体的には、カバークロップ(被覆作物/緑肥※4)およびアグロフォレストリー(森林農法※5)の導入に焦点を当てます。東南アジア諸国の多くの小規模農家は、短期的な収益や既存の農業システムへの依存により、新たな農法への移行に課題を抱えています。Green Carbonは、現地の農地に最適な作物を選定し、最も効果的な農法を検証することで、脱炭素効果と農家の経済的利益の両立を目指します。さらに、化学肥料から有機肥料・堆肥への切り替え、間作や輪作の導入、不耕起農法の実践など、カーボンファーミングに含まれる多様な農地改善活動を組み合わせた土壌炭素貯留手法の開発・普及に取り組みます。
これらの手法は単に排出削減に貢献するだけでなく、土壌の健全性向上、水資源の保全、生物多様性の促進、農作物収量の安定化、そして農家の収入向上にも寄与します。今後は、専門的な知見を有するSEARCAと連携して、様々な土壌条件や気候条件に適した手法を実証試験し、最も脱炭素効果が高く、地域農家への裨益が大きい組み合わせを科学的に検証していきます。これにより、東南アジア地域における持続可能な農業の普及とカーボンクレジット創出の拡大を実現し、地域の気候変動対策と農村経済の強化に貢献してまいります。